【医療従事者・介護士向け】認知症による人格の変化をどう捉えるか|人格形成の5因子と脳機能から考える

【医療従事者者・介護士向け】

こんにちは。さかもとです。
記事を開いてくださってありがとうございます。

現場で働いていると、患者様や利用者様のご家族から
「昔はもっともっと優しい人だった」
「前はいろんなことをやりたがったのに今は何もしたがらない」
とまるで人が変わったかのうように話を聞くことがあるかと思います。

では本当に「人格が変わった」のでしょうか?

結論からお伝えすると、根本的な人格は変わっていないと言えます。

しかし、脳科学の視点から考えると確かに人格が変わってしまったかのように見える原因はいくつかあります。

今回は、人格が変わってしまったかのように見える理由を深堀していきます。

1.人格を構成する要素|科学の視点から

そもそも、人間の「人格」とはなんなのでしょうか。
脳科学の分野では、人の人格は大きく分けて次の5つの要素から成り立っていると言われています。

1.神経症的傾向
2.開放性
3.誠実性
4.外向性
5.協調性

では、これらは一体何を表すのか
また、認知症になるとこれらはどう変化するかも調べられています。

これらがわかれば、認知症の方がなぜ「人格が変わった」と見えるのかが容易に分かるようになります。

2.神経症的傾向|認知症の方のストレスへの弱さの変化

1つ目に挙げられた神経症的傾向とは、
「ストレスへの弱さ」のことです。

たとえば、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症が周囲で流行している際に、何もかもが心配になり誰にも会えなくなってしまう人がいるとします。
こういった方は神経症的傾向が高いと言えるでしょう。

反対に、心配でも「必要だから外に出ていかなきゃ」外に出ていける人は神経症的傾向が低いと言えます。

では、神経症的傾向は認知症になるとどう変化するでしょうか。
日常生活に支障が生じはじめると、失敗する経験が増え思考が「被害妄想的」となりやすい傾向があります。

そのため、神経症的傾向は高くなっていき、ストレスに弱くなっていくことがあります。

3.開放性|認知症の方の好奇心の変化

次に「開放性」は、
「好奇心の強さ」を表します。

新しいことに挑戦したい思いや、知らない食べ物をどんどん食べてみたいと思うことは開放性が高いと言えます。

先にも述べたように、認知症の方が日常生活に支障をきたし始めると、
「恥をかきたくない」
「人前で失敗したくない」
という思いがより一層つよくなります。

こうして、行動一つ一つに「不安要素」が追加され
・外出を避ける
・新しいことはせず慣れていることしかしなくなる

と、開放性は下がっていく傾向にあります。

4.誠実性|認知症の方の誠実性は欠如するのか?

次に「誠実性」です。
「最後までやり遂げる」「約束を守る」といったことです。

特に誠実性が下がりやすい認知症があります。
・アルツハイマー型認知症
⇒海馬が障害されることで記憶の保持が困難となります。
そのため約束を覚えておくことがそもそも困難となります。

・前頭側頭型認知症
⇒物事を順序立てて考える「遂行機能」を司る領域が障害受けます。
そのため課題を最後までやり遂げる途中で順序が混乱してしまいます。

つまり、「課題の順序がわからなくなる」ことや「約束事を忘れてしまう」ことで誠実性が下がりやすくなります。

しかし、これらは認知症の症状の中でも「中核症状」と呼ばれる、「脳の変化」から起こるものです。
認知症ケアの視点で大切なことは、これらの症状より、その人のもともとの人格、つまり誠実性がどうかを見極めることです。

5.外向性|認知症の方の他者との交流が減ってしまう理由

次に「外向性」は、
「人をどれくらい好きか」を指します。

新しい「もの」ではなく「人」にどんどん会いに行けたり、誰とでも会いに行ける人は外向性が高いと言えます。

認知症の方は人前で失敗してしまう経験が増えたり、「恥ずかしい」と感じる場面が増えます。
その場合、その状況がストレスとなります。

人間は、ストレスから回避しようと行動する傾向があり、結果として認知症の方の外向性は下がっていき、他者との交流が減っていきます。

ここで私たちにとってできること、大切なことは、「失敗を失敗として感じさせない環境」を作り続けることです。

例えば、病棟やデイサービスでは認知症の方同士の会話でお互いに失敗している場面を見ている為、話が弾んだり、失敗を恥ずかしいことだと感じなくなってきたりします。

認知度に加え性格等も加味し、交流機会をスタッフ側が作るということが外向性を保つために大切です。

6.協調性|認知症の方はなぜ人とうまくやれなくなるのか

最後は「協調性」です。
「外向性」と似ていますが、人のことが好きでも「人とうまくやれるか」は別物です。

認知症の方の場合、失敗への不安から
・取り繕い
・サービスや介助への拒否
・易怒性
といった状況に陥り、人とうまくやることが難しくなります。

ここで、私たちにできることは先ほどと同様で、同じ認知症の方同士での交流の機会を確保することです。このとき、協調性という視点からも、認知度のみならず性格の見極めも必要となります。

また、「性格の見極め」もこの人格を示す5つの指標を役立てることができます。

7.認知症の方の人格が変化したと感じるもう一つの理由|扁桃体が敏感になる

アルツハイマー型認知症では記憶を司る「海馬」と呼ばれる領域が障害され、記憶の保持が困難となります。

しかし、「扁桃体」と呼ばれる感情を司る領域は正常に運転していることがほとんどです。
偏桃体は海馬と隣り合っています。

そのため、私たちはなにか恐怖心や不安なことがあっても
・「昔同じような経験している」
・「前は大丈夫だった」
と無意識に過去の記憶を遡ることで気持ちを落ち着かせています。

認知症の方は、この「過去を遡る」ということが難しくなり、不安が残りやすくなります。
・声色
・表情
といった要素に敏感になり安心感を得ようとする傾向があります。

深酒をした次の日に
「あまり覚えてないけど、昨日みんなに迷惑をかけていないかな」
と不安になる感覚に近いと思います。次の日にみんなに会った時に安心感を得ようとします。

認知症の方はこの不安が日常的に起こっていると考えるとイメージしやすいと思います。

また、感情が強く動かされると、海馬も刺激を受けることがあるそうです。

例えば、普段行わない外出やアクティビティをすると、
「詳しくは覚えてないけどなんとなく昨日は楽しかった気がする」
といった感情による記憶が残っていることもあります。

8.認知症の方への環境調整や関わり方が大切な理由

ここまで、認知症のかたの人格や感情の変化について深堀りしてきました。

こう考えてみても、
「それは自信なくして当然だよね」
「不安になって仕方ないよね」
と共感できることがほとんどだと思いますし、根本的な人格はあまり変わっていないことがわかると思います。

また、「人格の変化」ともとれるような状況を生み出さないための環境や関わり方の工夫が私たちにできることもまた事実です。

本人が安心して過ごすために行える関わり方のテクニックは以下のブログで解説しています。
併せてご覧いただけると幸いです。
【医療従事者・介護士向け】認知症ケアで重要な「共感・傾聴」のテクニックとは?すぐに実践できる「バリデーション」の方法を解説

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