親や家族などの身内に認知症の方がいると
・会話が難しいから何を考えているかわからない
・何をしたいのかがわからない
・こちらの話が理解してもらえない
といった悩みや変化を感じることもあるかと思います。
ですが、それらは単なる「症状」ではありません。
これらの裏には、満たされていない「心理的ニーズ」が隠れていることがあります。
1.重度認知症になると何もわからないのか?|残る感情・思い
自宅で認知症の家族を見ていると、自分の考えや求めていることを話すことが難しくなっていくことがあると思います。
重度認知症になると「何もわからない状態」と思われがちです。
しかし、認知症の方は「感情」については保たれています。
考えていることや感じていることはあっても、それを表に出すことが難しいのです。
そのとき、認知症であっても、人間であれば必ず持っている「心理的ニーズ」を理解して満たしていくことが重要となります。
2.心理的ニーズとは?|認知症の方が求める思いや欲求
心理的ニーズとは、
「人間であれば誰しもが生まれながらに持っている心理的な欲求」のことです。
いくら記憶が曖昧になっても、言葉を発することが難しくなっても
この心理的欲求がなくなることはありません。
むしろ、認知症になると、より強く求めるようになることもあります。
心理的ニーズとして知られているのは
・自分らしさ
・愛着・結びつき
・たずさわること
・共にあること
・くつろぎ・やすらぎ
これらの欲求を持っている以上、これら思いを第一に考えることがその人の考えていることや思いを汲み取るためにとても大切です。
3.認知症でも「自分らしくありたい」|その人ならではのアイデンティティを大事にしよう
認知症になっても、「自分らしく暮らし続けたい」という願いは誰しもが持っています。
例えば
・昔の仕事
・趣味
・価値観や誇り
といったものが「その人らしさ」に当てはまるでしょう。
しかし、失敗することが増えたりできなくなってしまったりと、
このアイデンティティを保つことが難しくなってくることもあるでしょう。
その際はその人の生きた歴史を振り返りながら
・昔の話をしたり、してもらったり、
・趣味でやってたことを手伝って一緒にやったり、鑑賞したり
といった家族からの支援がその人らしさを保つことにつながります。
4.認知症の人が持ち続けたい愛着・結びつき
これは、理屈では説明がつかないどうしようもなく好きなものや、なんとなく落ち着くものをさします。
家族や友人等の親しい人との結びつきを持ち続けたいという願いも含まれます。
例えば、昔から使っている寝具や食器、お気に入りのラジオなどが含まれます。
認知症が進行し、介護ベッドが必要になった際に本人の落ち着きがなくなったり、部屋のレイアウトや手すりなどを便利にしようと変えてしまうとかえって活動性が失われていくこともあります。
本人の愛着のあるものを理解し、いきなりすべてを便利にお部屋を変えるのではなく、本人の様子を見ながら愛着のあるものを残しつつ徐々にレイアウト等の変更を試みるようにしてみてください。
また、なかなか落ち着きのない方でも愛着のあるものを目に入る場所に置いておくだけですぐに眠りにつくケースも多くあります。
5.認知症になっても人のためになりたい|役割を持ちたい・携わりたいという願い
人間は誰しも、誰かの役に立ちたいという願いを持っています。
家族や身内の方が認知所になると「前はできてたのに…」とできなくなってしまったことに着目してしまいがちです。
しかし、「できること」や「豊かな感性」は必ず残っています。
人として必要とすることはもちろん。役割として、必要とされていることを感じてもらうことがご本人が満たされ、豊かに過ごすことのできる手助けとなります。
たとえば、
・手が動く⇒テーブルを拭いてもらう
・会話ができる⇒何かについて意見を考えてもらう
・目が見える⇒なにかを見張っててもらう
実際にその役割を担っていなくても、本人が「この役割は私の役目」と感じていれば十分です。
とくに火や子供について「見張ってもらう」役割は任せるのは危険だと思うので、実際には私たちが管理しながら見張ってもらうふりをしておくのがベストでしょう。
ここで大切なことは、その役割をしてもらった際、「〇〇していてくれてありがとう」と感謝の意を必ず伝えることです。
こうすることで、役割を担ったことを実感し、その人の能力・気力を引き出すことにつながります。
6.認知症でも人とつながっていたい|共にあること
どのような人でも「人とつながりを持って生きていきたい」「社会とつながって生きたい」という気持ちを持っています。
上記の「役割を持つ」ことや本人についての話は必ず本人を挟んで行うことが理想的です。
先ほどの部屋のレイアウトについての話し合いや、今後のサービスについての話。
これらは、「本人がいる」という当たり前のことを大切にし、一員として、個性・存在を感じられるようにしなければなりません。
7.認知症でも不安や混乱なく過ごしたい|くつろぎ・やすらぎ
不安や混乱、緊張がなく、心穏やかにリラックスして過ごしたいという思いを、認知症の方も例外なく人間誰しもが持っています。
認知症と診断され、できなくなってしまうことが増えることに伴い、生活の環境もめまぐるしく変わっていきます。
そんな中、不安や混乱なく穏やかさを保つことはなかなか難しいかもしれません。
ここで大切なことは、家族がご本人のペースを大切にすることです。
生活のリズムや食事・トイレといった日常生活動作でも、急かすことなくご本人がリラックスできるペースで行うことで、不安や混乱なく心穏やかに過ごすことができる大切な助けになります。
8.重度認知症でもできること・してあげられること
今回は5つの「心理的ニーズ」についてお話ししました。
・話が理解できない
・言葉を発することができない
このような重度の認知症でも、これらのニーズ(欲求)を理解していれば本人が何を求めているかわかってくると思います。
また、軽度の認知症の方でも行動の一つ一つの背景にこういった「欲求」があるのかもしれません。
記憶力や身体機能、すべてが少しずつ下がっていってしまう病気ではなく、必ず保たれている「感情」。ここに焦点を当てて考えてみるようにしてください。
認知症の方の「感情」については以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひご覧ください
⇒【家族向け】認知症になっても失われないもの|感情・記憶力は残る?
最後までお読みいただきありがとうございました。
ご相談がある方はこちらのお問い合わせページからお気軽にどうぞ。

コメント